2019年5月29日水曜日

〈制作秘話第二回〉1-1-1

制作秘話、第二回です。
まずはこれでしょう!

Bloody Snowは「大雪」の意味があります。
幼少時、堆積された雪の層を見た私がそこに日々の歴史を感じ、やがて地層にさえ愛着を持つわけです。
北極や南極の氷は本当に雪が堆積し圧縮されたものであり、当時――数万年前の大気の塵を抱いて降り注いだので、圧雪にも歴史あり、私はそう思います。
この曲は、もしもゲームを作るならシリーズのOP用曲として作りました。
NEW GAME
CONTINU
OPTION
って脳内でボタン作っといてください。

楽曲解説をすると、D調の5音音階でして。
D調の曲というのは教会音楽でのハルレヤを意味する調でもあり、民族音楽でも基本の調だったりします。
だいたいD。
黒獅子物語――グラジルアスの戦いが歴史の彼方に流れて忘れ去られても、この歌だけは残り、母から子へ、歌は歌い継がれる……。
というイメージで、とてもシンプルなつくりにしました。
コーラスはもちろん私だよ! 輪郭に肉声を入れるととってもそれっぽくなるからだよ!

ということでやっと本編さ入るだ。

次にこれだっちゃ。
本編とは。
写真は、私がドイツに行ったときのものです。
かのローマ皇帝の血脈たる一族の城、ホーエンツォレルン城でございます。
音楽皇帝と呼ばれたヨーゼフ二世の師、フルート教育を著した人物であるヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ先生の足跡、ヨーゼフ二世が使っていた本物のフルートと楽譜があって、天恵中の天恵でございました。
それとこの日は雪で、そう、突然寒くなった日で、そんななか、山の上にある城を目指してぐるぐると背高な塀の中を登っていった……。懐かしいものです。

楽曲解説します。
B調です。やっすい打ち込みなのでバグパイプが仕事してませんね。
笛は適当にぶっつけで吹きました。エコーがいい仕事してる。シャン。
お城の曲です。ゲームだったら、ケルツェル城でずっと流れます。
会議の後、グレイが行ける場所は限られています。
音楽サロンに行ったら、好きなだけチェンバロが弾けますがあんまりやってるとミラーが迎えに来ます。そんな妄想。

まって物語の話してない。

1-1-1と1-1-2の間には一か月の時間が横たわっています。
カレンダー(捨てちゃったっぽい)にはそう書いてあったと記憶しています。

とにかく、ガルシア・マルケスのような文章の着弾と爆発をさせるために、とてもとても心を割いていました。
旧版では、ゲームの導入のようにグレイ13歳が即位するところから始まっていたのですが、その始まりでは爆発しないんですよ。私はそう考えました。
『純白の抒情詩(以下リューリカ』の墓場スタートは、あれはあれでセンセーショナルだったみたいなんですけども、グレイの場合にはちょっと話が違うので。
爆発させたかったんですよ。こう、何かがすでに始まっているのだと。

それでね、冒頭だから、たくさん情報を開示しなきゃいけないのです。
興味を持ってもらわねばならんのです。
ついでに言うと、ゆくゆくは謎となるものの答えも置かねばならんのです。
主人公がどんな奴か、っていうのは後から分かればいいんです。
主人公が誰か、さえわかれば。

1-1-1は、けっこう好きなフレーズが多いです。
グレイの心情に近い部分で文章を書いたので、散文詩的な書き方がしやすかったんだと思います。
三人称一人称視点を貫いている中で、グレイの瞳が青であることを書くのに、あの一節はとっても優れていたと思います。自分の目が青い(ブルー。ちなみにblue eyesはうかない瞳、憂鬱な視線、という風な言い回しでよく使われます。『煌めき屋』でのロセッティの詩で見つけられますよ。)ってことをよくわかっているからこそ書けたのが、あの一節です。イマジナリーな世界から発した文章だから可能でした。普通はしないかな。だって自分の瞳の色は、鏡が無けりゃわからないでしょ。だから。

思惑まみれの大人たちの中で、お飾りの少年が一人。
愚かならば口を挟み、利口ならば口を噤み、さらに利口なら必要なだけ口を開くでしょう。
このときのグレイは、統治者でありながら、まだ子どもなのですね。
さて、沈黙には観察がつきものです。
グレイも聡明な瞳を濁らせるまでの演技をしながら、口を曲げる偽りの紳士たちからステンドグラスまで、いろんなものを見ています。
わたしは、ステンドグラスについては、ヨーロッパ各地の教会堂でいろんなものを見てきました。
あれは、絵物語なのですよね。
カトリックによるラテン語主義(文語)と文献包囲の歴史の中で、識字力のない民衆は説教とステンドグラスによって聖書の物語を知らされるわけです。
民衆の口語をそのまま文字にしていく運動から、聖書をみんなが読めるようにする運動については、みなさんもうご存知でしょうから割愛させていただきます。

まあ、そういうわけで、ヴァニアスの国会議事堂にも建国の歴史が描かれているわけです。
そうそう、ホーエンツォレルン家もそうですが、エントランスの壁一面に樹形図――誰が誰の子でどの位であるか、という肖像がつらなる物――があるのは名家の証のようです。プロイセン風の、とも付け加えておきましょう。ストックホルムには無かったもの。

いろいろ重要な情報が出てくる部分でもありますが、とにかく説明したくなかったので、みんなに話してもらいました。
説明、みんな嫌いでしょ?
大人のやるまどろっこしいことが嫌だったり、うすらさむがったりするのは、グレイも同じです。
口癖「侮るなよ」が飛び出すのもしかり。

うまくいったなポイントは、さらっとラインとミラーの紹介が済んだこと。
前述のとおり、最初からあんまり言わんでいいの。
あと、ちょびが〈薔薇〉のハンケチでヨヨヨってするところ、必要か不必要かの是非はともかく、〈薔薇〉だぜ、ってことで書きたかったんです。

旧版のちょびはとにかくゲスで、あさましくて、利己主義で、めっちゃくちゃわかりやすい悪役のレッテルを貼られた人間だったのです。
が、かくかくしかじかの色んな手をつかってただの伯爵から宰相の身分へジャンプアップして息子を王女と婚約させるところまできている事実はただの超敏腕政治家。
そんな人がインテリじゃないわけ、ないじゃないですか。
狡猾さをにおわせない狡猾さ、これってサイコですよ、とても頭が切れる男ですよ。
そして品性に欠かない。
エフゲニー・リンデンという男は、洗練された悪なのです。
もちろん、大きな野望のうち、はたせるもの、そうでないものの区別もつきます。
己が立身出世はここまでと思うからこそ、己の血を持つ息子をさらに持ち上げてやろうとする、心意気。めっちゃ政治家やん。

私個人は、素直で、頑固で、研究畑の人間で、政治的な立ち振る舞いは本当に苦手で、逆に上手な先輩や後輩の踏み台にされてきたクチです。
ああいう、嗅覚の優れている人間というのは、他人の幸運を掠めとる機会を虎視眈々と狙い、素早く手を出すのに長けています。
悔しくて歯がゆくて、それで自信を無くしたこともありました。
でも、自分には自分が一番輝く方法――信念を貫く(後でミラーが言ってくれる!レイピアは!己の!信念を!)ことだと、今は思います。
他人の真似したって他人にはなれないし、どうせ真似するなら、もっと素敵なところを勉強したいですね。

と、いうわけで、グレイにとってはリンデン伯爵という男が、そういうライバルなわけです。
1-1-1、おわり。

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