2019年5月29日水曜日

〈制作秘話第三回〉1-1-2

あたまぐしゃぐしゃーっ! でグレイちゃんの本性発現。
マントと仮面となよなよボイスと愚痴を一緒くたに床にバーンする一節もよく書けてると自画自賛だったりします。おらこなくそー!って。
1-1-2では、実はグレイよりもラインとミラーがどんな奴か、っていうのがクローズアップされています。
天然のラインが、彼なりに頑張ってなんか言ってる(この言い草である)のをグレイがむぎゅーっていじめたり、真面目のミラーが健気で優しくて可愛がらずにいられないのを撫でたり。
そんなミラーのテーマがこれ。
鍵盤楽器が上手なグレイが、ミラーをイメージしながら即興演奏した、そういうイメージで私が即興演奏して作った曲です。Cの部分で聞こえてくるグロッケンのメロディは、ラインのテーマからの引用ですよ。萌えて。
ちなみに私は絵が古くて死にかけている。

今はこの二人が――あとぢぢいも――グレイの近しい存在、家族なんだというお話です。
すうっと日が陰るなり、なんだか寂しくて冷たい風が吹いて。
密室に吹いた隙間風は、そう、フラグです。ホホホ。

家族の肖像画、そういや『少年王のジレンマ』が手元になければわからんのでした。
これがそうです。
2015年の絵だ!
うわあ!描きなおしたい!助けて!
ラインとミラーが出会って、なんやかんや、一緒に若を支えて行こうね、ってなる『少年王のジレンマ』は現在廃刊中ですが、黒獅子物語が完結したら補完のために大幅改定・加筆修正を行って本にしたいつもりがあります。
ということで、1-1-2、おわり。

〈制作秘話第二回〉1-1-1

制作秘話、第二回です。
まずはこれでしょう!

Bloody Snowは「大雪」の意味があります。
幼少時、堆積された雪の層を見た私がそこに日々の歴史を感じ、やがて地層にさえ愛着を持つわけです。
北極や南極の氷は本当に雪が堆積し圧縮されたものであり、当時――数万年前の大気の塵を抱いて降り注いだので、圧雪にも歴史あり、私はそう思います。
この曲は、もしもゲームを作るならシリーズのOP用曲として作りました。
NEW GAME
CONTINU
OPTION
って脳内でボタン作っといてください。

楽曲解説をすると、D調の5音音階でして。
D調の曲というのは教会音楽でのハルレヤを意味する調でもあり、民族音楽でも基本の調だったりします。
だいたいD。
黒獅子物語――グラジルアスの戦いが歴史の彼方に流れて忘れ去られても、この歌だけは残り、母から子へ、歌は歌い継がれる……。
というイメージで、とてもシンプルなつくりにしました。
コーラスはもちろん私だよ! 輪郭に肉声を入れるととってもそれっぽくなるからだよ!

ということでやっと本編さ入るだ。

次にこれだっちゃ。
本編とは。
写真は、私がドイツに行ったときのものです。
かのローマ皇帝の血脈たる一族の城、ホーエンツォレルン城でございます。
音楽皇帝と呼ばれたヨーゼフ二世の師、フルート教育を著した人物であるヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ先生の足跡、ヨーゼフ二世が使っていた本物のフルートと楽譜があって、天恵中の天恵でございました。
それとこの日は雪で、そう、突然寒くなった日で、そんななか、山の上にある城を目指してぐるぐると背高な塀の中を登っていった……。懐かしいものです。

楽曲解説します。
B調です。やっすい打ち込みなのでバグパイプが仕事してませんね。
笛は適当にぶっつけで吹きました。エコーがいい仕事してる。シャン。
お城の曲です。ゲームだったら、ケルツェル城でずっと流れます。
会議の後、グレイが行ける場所は限られています。
音楽サロンに行ったら、好きなだけチェンバロが弾けますがあんまりやってるとミラーが迎えに来ます。そんな妄想。

まって物語の話してない。

1-1-1と1-1-2の間には一か月の時間が横たわっています。
カレンダー(捨てちゃったっぽい)にはそう書いてあったと記憶しています。

とにかく、ガルシア・マルケスのような文章の着弾と爆発をさせるために、とてもとても心を割いていました。
旧版では、ゲームの導入のようにグレイ13歳が即位するところから始まっていたのですが、その始まりでは爆発しないんですよ。私はそう考えました。
『純白の抒情詩(以下リューリカ』の墓場スタートは、あれはあれでセンセーショナルだったみたいなんですけども、グレイの場合にはちょっと話が違うので。
爆発させたかったんですよ。こう、何かがすでに始まっているのだと。

それでね、冒頭だから、たくさん情報を開示しなきゃいけないのです。
興味を持ってもらわねばならんのです。
ついでに言うと、ゆくゆくは謎となるものの答えも置かねばならんのです。
主人公がどんな奴か、っていうのは後から分かればいいんです。
主人公が誰か、さえわかれば。

1-1-1は、けっこう好きなフレーズが多いです。
グレイの心情に近い部分で文章を書いたので、散文詩的な書き方がしやすかったんだと思います。
三人称一人称視点を貫いている中で、グレイの瞳が青であることを書くのに、あの一節はとっても優れていたと思います。自分の目が青い(ブルー。ちなみにblue eyesはうかない瞳、憂鬱な視線、という風な言い回しでよく使われます。『煌めき屋』でのロセッティの詩で見つけられますよ。)ってことをよくわかっているからこそ書けたのが、あの一節です。イマジナリーな世界から発した文章だから可能でした。普通はしないかな。だって自分の瞳の色は、鏡が無けりゃわからないでしょ。だから。

思惑まみれの大人たちの中で、お飾りの少年が一人。
愚かならば口を挟み、利口ならば口を噤み、さらに利口なら必要なだけ口を開くでしょう。
このときのグレイは、統治者でありながら、まだ子どもなのですね。
さて、沈黙には観察がつきものです。
グレイも聡明な瞳を濁らせるまでの演技をしながら、口を曲げる偽りの紳士たちからステンドグラスまで、いろんなものを見ています。
わたしは、ステンドグラスについては、ヨーロッパ各地の教会堂でいろんなものを見てきました。
あれは、絵物語なのですよね。
カトリックによるラテン語主義(文語)と文献包囲の歴史の中で、識字力のない民衆は説教とステンドグラスによって聖書の物語を知らされるわけです。
民衆の口語をそのまま文字にしていく運動から、聖書をみんなが読めるようにする運動については、みなさんもうご存知でしょうから割愛させていただきます。

まあ、そういうわけで、ヴァニアスの国会議事堂にも建国の歴史が描かれているわけです。
そうそう、ホーエンツォレルン家もそうですが、エントランスの壁一面に樹形図――誰が誰の子でどの位であるか、という肖像がつらなる物――があるのは名家の証のようです。プロイセン風の、とも付け加えておきましょう。ストックホルムには無かったもの。

いろいろ重要な情報が出てくる部分でもありますが、とにかく説明したくなかったので、みんなに話してもらいました。
説明、みんな嫌いでしょ?
大人のやるまどろっこしいことが嫌だったり、うすらさむがったりするのは、グレイも同じです。
口癖「侮るなよ」が飛び出すのもしかり。

うまくいったなポイントは、さらっとラインとミラーの紹介が済んだこと。
前述のとおり、最初からあんまり言わんでいいの。
あと、ちょびが〈薔薇〉のハンケチでヨヨヨってするところ、必要か不必要かの是非はともかく、〈薔薇〉だぜ、ってことで書きたかったんです。

旧版のちょびはとにかくゲスで、あさましくて、利己主義で、めっちゃくちゃわかりやすい悪役のレッテルを貼られた人間だったのです。
が、かくかくしかじかの色んな手をつかってただの伯爵から宰相の身分へジャンプアップして息子を王女と婚約させるところまできている事実はただの超敏腕政治家。
そんな人がインテリじゃないわけ、ないじゃないですか。
狡猾さをにおわせない狡猾さ、これってサイコですよ、とても頭が切れる男ですよ。
そして品性に欠かない。
エフゲニー・リンデンという男は、洗練された悪なのです。
もちろん、大きな野望のうち、はたせるもの、そうでないものの区別もつきます。
己が立身出世はここまでと思うからこそ、己の血を持つ息子をさらに持ち上げてやろうとする、心意気。めっちゃ政治家やん。

私個人は、素直で、頑固で、研究畑の人間で、政治的な立ち振る舞いは本当に苦手で、逆に上手な先輩や後輩の踏み台にされてきたクチです。
ああいう、嗅覚の優れている人間というのは、他人の幸運を掠めとる機会を虎視眈々と狙い、素早く手を出すのに長けています。
悔しくて歯がゆくて、それで自信を無くしたこともありました。
でも、自分には自分が一番輝く方法――信念を貫く(後でミラーが言ってくれる!レイピアは!己の!信念を!)ことだと、今は思います。
他人の真似したって他人にはなれないし、どうせ真似するなら、もっと素敵なところを勉強したいですね。

と、いうわけで、グレイにとってはリンデン伯爵という男が、そういうライバルなわけです。
1-1-1、おわり。

2019年5月28日火曜日

〈制作秘話第一回〉くろしし一巻表紙の話

気負わず、しかも連載だ、と言い切った昨日の枕元で、真っ先に考えたのはこれ。
「表紙って本の顔よね」
ということで、くろしし制作秘話の第一回は表紙の話にします。

いろんなラフを出力して、そこからいいのを選ぶ、というよりかは、
最初にロゴとサブタイトル、帯というハコがあることを前提に、
レイアウトから決めていくのが私のスタイルです。
ちゅって、その参考画像はないんですけど。

HDDにあったデータを古→新の順番で並べてみました。
「旅立ち」「主人公」「ヒロイン」「王国」などファンタジーだぞ要素を詰め込んだ一枚。最終的にこれが決定ラフになるのでありますが……。
少年漫画とかゲームとかでよくあるやつ。みんなが大好きでやるやつ。私は描くのが苦手なやつですが、がんばって入れ込んでみました。人の顔ばっかりでどんなお話なのか想像する余地がないので、却下。

たらたららくがきしていたものを流用してみようよ作戦。一巻は船のお話なので、船上のようすなんていいよねって。でもやっぱり話が見えないので却下。表紙から物語は始まっているのです。

コミックスの完全版とかでよくある、キャラ単体のやつ。良くも悪くもない。やっぱり話が見えない。

と、いうわけでこちらが決定ラフ。
自分一人だけでやっているので、デザインの良し悪しについて、目が麻痺してくることも多いのですが、優しい仲良しさんが「こっちのがすき」と「ぱっと見」を教えてくれるので、それを信じたり助けにしたりして、デザインを決めたりしています。
特に一巻の帯(真っ赤な背景に筆文字)で、フレエドムの千鳥スズヤさんから「表紙の雰囲気と離れた戦国っぽさが……」とご指摘いただいたのは覿面に効きました。
それで現行のデザインに変えたんです~。
こうして、みんなのしってる表紙になりましたとさ。
レイアウト解説をすると、視線誘導ラインはこの順。
①サブタイ頭→お尻
②グレイの顔
③「黒獅子物語」
④ミルの顔
⑤ミルの胸(絶対大事
⑥帯
という、ロシヤのイの字(Nのさかさまのやつ)で視線誘導しています。
でも、ちょっとあれね、無理矢理感はいなめない。
これは以降、改善されていくことになります。

デザインは、ユーザブル……見る人にぱっと伝わらないとデザインとしての価値を持たないので、だれかの「ぱっと見」意見はとっても参考になります。

小説の顔となる表紙では「この世界」「この人たち」「どんな物語」というイメージを、絵を見たお客さん自身で膨らませてもらわねばならないので、けっこうデザインパワーが必要になってくると思います。ロゴもね。

ロゴも頑張って作った。
M先輩からも好評で「星はしし座なの?」って聞かれたけど、そうじゃないの。
どっちかっていうと、「くろししものがたり」と音読する時の日本語アクセント音節の向き(さくらんぼみたいなやつですよ。しってます?)を意識して配置してます。
あとはね、漢字の画。
そういわれてみると、そうでしょう?

イラスト制作の順番とかは、そこら辺のお絵かきさんとさほど変わりませんので割愛します。
次回は、執筆に一か月を注ぎ込んだ(無駄遣いした)1-1-1についてお話してみたいです。

2019年5月27日月曜日

料理は美味けりゃそれでいい、と思っていたけど

関西コミティア55、ありがとうございました。
快晴の中の快晴、お日様が熱心な参加者を焼いたり蒸したりする中で、会場は本当に熱気に満ちていました! ようこそおこしくださいました。

イベントにお越しくださる方から「作品のお話を聴けて嬉しい」との声を受け、こちらも嬉しい反面「これが……需要……?」と戸惑う自分もいます。ここあです。
思考経路、どんなふうにシミュレートして、この子はこういう子で……。
そんな物語の歴史ともいえる部分を知りたいだなんて、あなたも好きね!
……と思いつつ、私だったら。

例えばふらりと立ち寄ったカフェで、コーヒーだけではカロリー足りないからと頼んだケーキに舌鼓を打てば、「この材料は何かしら」「スポンジの甘さが絶妙だわ」「いちごが高級!」などと作品の成立について思いを馳せたりします。

それと同じ、なのかな。
でも料理している自分をじいっとみられているのは恥ずかしいな。
そこで自分の備忘録も兼ねて「くろしし制作秘話」などという大層なタグを作ってみました。

黒獅子物語の目次どおり、1-1-1から順番に思い出していこうと思います。
そうそう、ここはこの曲なのよ! みたいな自作曲とか、イメージのための音楽とか、そういうのもご紹介出来たら、きっと楽しいですよね。私が。
できるだけ整理し、できるだけざっくばらんに、大層にならないように書きたいと思います。
そうやって連載になったらいいな。
新れんさい。あまりご期待せずに……。

2019年5月17日金曜日

春の東京遠征、ありがとうございました。

こんにちは。
こんばんはのお時間でも随分と明るくなりましたね。
黒井ここあでございます。
原稿を理由にしてしばらく書かずにいたせいで、
ブログでのノリってどうだったかすっかり忘れちゃいました。
なんかキャラを作ってたような、そうじゃないような。
イベントでこんにちはするときのあの感じで書けたらいいなあ。

☆黒獅子物語の三巻が出ました☆

出ました。出せました。
方々に弱音を吐き散らかしながら書き上げました。
学習能力が足りていないの、もろばれ。
きっとブログにまで来て下さったあなたは、裏話とか聞きたいんですよね。
実は、そういうのをお話しするのって苦手で。
裏も表もお話っていうものは全部作品に詰め込んであるので、
「この裏ではね」みたいな隠し土管はないんです。
強いて言えば、本来予定していた表紙絵をばっさり棄てて、現行のを採用した、ぐらいかしら。そんなもんです。

でも、何があったかなぁ。
泣いたスケジュールについて懺悔するぐらいかなぁ。
着手はいつもより早かったんですよね。
12月と1月とで、ずっとこまプロットをいじっていたんです。
一週間で書けるかなぁと思いきや、そんなうまくはいかじ。
カレンダーには、1月30日、3-1-1と書いてあります。
でもここからが長くて、必要な情報が必要なだけ出せているか、
文章が変じゃないか、ずうっともちゃもちゃとこの辺りの数話をいじっていて
結局3-1が終わったのは3月の頭だったわけです。
あとはずっと、「間に合わない、この調子で書いてたら間に合わない」って
泣き言を言いながら毎日お料理と執筆をしていた想い出しかありません。
鹿島もちょうどオフシーズンだったし、気持ちの持って行き方では
家人にかなり頼ってしまいました。
強い気持ち、ホント大事。

☆東京日帰り×2☆

文学フリマ東京とCOMITIAは、ブッキングしちゃいがちな悲しい関係があります。
2019年春は別日程になったのが、ちょっとした奇跡にも感じるくらいです。
一年に一回は顔を出しておきたい、忘れられないでいたい。
そういうわけで、文学フリマ東京とCOMITIAの両日を日帰りで決行しました。
どちらも、ゆるっと繋がっているメイドスキー戦隊の仲間に支えられながら、
楽しい気分で終えることができました。ありがとうございました。
もちろん、ご来場くださった方、本をお持ち帰りいただいた方のお陰でもあります。
分厚くて高い本なのに。ご愛顧くださり、本当に嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。

飛行機でとんぼ返りした両日程ですが、宿泊費を思うとこれがいいのかな。
ちょっとがんばればみんなでご飯も食べられるし。
みんなのご協力の上で、だけど……。

☆メイドスキー戦隊と新メンバー☆

COMITIA128をちょっと早めに切り上げて向かったヴィーナスフォート。
そこではまっぴるまのサバトが行われました。withパンケーキ。
女子会っぽいでしょう!
パンケーキが焼けるまでのあいだは、メンバー持ちよりのカードゲームで楽しみました。

※メイドスキー戦隊とは
「メイドさんが好き」の一点とかでゆるっと繋がっているサークル的なもの。
毎年一冊、たのしいメイドさんのアンソロジーを出しているよ。

新メンバーも加わり、メイドアンソロ3(仮)の〆切も確定。
メイドアンソロ3では、「手癖封印☆不得意チャレンジ」を予定しています。
自分の得手不得手、だれしもあると思います。
メイドスキー戦隊は長所のベクトルがバラバラなメンツで、
それがアンソロを個性豊かにしているわけですが、
ほら、たまにはイタリアン食べたいじゃん?
というノリで、手癖を封印してみよう、ということになりました。
それぞれが「普段やらないこと」に挑戦するのも、面白いじゃないですか。
幅、ひろげていきまっしょい。
秋も忙しいわよ~~!

と、いうのが、2019年春の東京遠征でございました。
次は関西だ!


追記

東京で関西人にばっかり出会います。
関西コミティアにも来てね!よろしくです!

2019年1月17日木曜日

第二巻、あとがきにかえて

2018年11月25日のCOMITIA126から、新刊『黒獅子物語』第二巻の行商を続けてきました。
年もまたいだ1月20日関西コミティア54で、それも一区切りです。
大切な人の手元に行き渡ったころだとふんで、
理由を挟んで、あとがきのようなものを書きたいと思います。

~~あとがきを本誌に載せない理由~~

これはたったひとつ、「あとがきを読まれないため」です。
同人誌即売会にて展示した際、どんなに作り込んでいても
いろんな人があとがきから読むのです。嬉しくない。
これすなわち、手品のタネをさきに見に行くようなものではありませんか。
冒頭に血のにじむような努力をしているのがすべて無駄になりかねません。
なので、蛇足たるあとがきを本誌から撤廃しました。以上

あとがきのようなもの

 この度は『〈黒獅子物語2〉清らなる神子姫』をお求めいただき、誠にありがとうございます。グレイの冒険が始まった第一巻は、爽やかなはつらつとしたボーイミーツガールでしたから、この二巻の展開と引きには驚かれたことと思います。はらはらする気持ちを、そのまま第三巻の期待としてお持ちいただけたら嬉しいです。
 旧版のことを引き合いに出せないほど、すべてが新しくなっているなかで、とりわけリンデン伯爵の人物像を大切にしました。
 悪が悪に見えぬほどの温厚な人柄や信頼の厚さなど、政治手腕に優れた人間でありますが、人間的には見通しのきかない部分の多い、食えぬ男。味方となれば心強く、敵ならば難攻不落。愛の対極に位置するであろう、とても難しい男です。しかしその実、血を分けた息子アレクセイを溺愛してもいます。早世した妻を愛していたかは不明ですが、血縁者には並々ならぬ思いを抱いているようです。リンデン伯爵がいかにして魔術を手に入れたかは、きっとそのうちさらりとどこかに挟まった一文で明らかになることでしょう。そういうこと、多いです。たった一言に秘密のすべて、謎の答えが詰まっていたりします。目を皿にして読み返してみてくださいね。
 さて、ここからはお待ちかね、音楽の話です。
 第二巻には、たくさんのリュート歌曲があらわれますが、たったひとつ――ファリーがルヴァとリシュナをテーマに作った『清らなる神子姫』を除くすべての楽曲が実在しているものです。
 十六世紀にダウランドにより作曲されたもので、著作権は大丈夫。
 歌詞(=英語です)はすべて私が翻訳してありますから、そこんところも大丈夫。
 押韻も残し、単語そのものの意味する韻も踏んだこだわりの訳ですが、掘り下げると英語の授業になるのでやめておきます。そういうのは人にきいたってつまらないし、なにより、自分で調べがつくはずですからね。
 では、安心しながら、楽曲を聞いてみてくださいね。
※ページ数は二巻に対応しています。

28p あなたは見たか、白百合輝き咲くところ
Have you seen, the bright lily grow
https://www.youtube.com/watch?v=SeITdXplKF4
(bright がwhiteになってますが、些細なこと、楽譜の版違いと思われます。
それよりも、彼のビロードのように滑らかなカウンターテナーと
自由闊達な超絶技巧をお楽しみください)

298p 戻っておいで!
Come again
https://www.youtube.com/watch?v=Qgr65P-rr_4
(ダウランドのリュート歌曲は女性向けの音域に設定されている中、
若々しいハイバリトンの演奏になります。
もしも夜に窓辺で歌われたらたちまち心を奪われてしまうような
実直でスイートな喉の持ち主ですね)

 そういえばいろいろと音楽が鳴っているシーンがあったことを思い出したのですが、民衆の音楽はだいたいがルネッサンス音楽だとおもっていただけたら、すぐにイメージがつくと思います。宮廷舞曲については、フランス風でもスペイン風でも、いずれも典雅で素敵ですけれども、足譜を考えるとフランス風のほうがやさしいかもしれません。このフランス風楽曲にあわせて踊るダンスのことをバロックバレエと呼ぶのですが、現代に「バレエ」と呼ばれているものとは全くの別物であることを留意しておいてくださいね。今、われわれが「バレエ」と呼んでいるものは「バレエ・リュス(ロシアバレエ団)」が公演してまわった新しいものなのですから。
 毎度好評の食事シーンですが、大概がご自宅で作っていただけるイージーなレシピばかりですから、どうぞ作ってみてください。ポイントはクロスグリやコケモモのソース……そう甘酸っぱいアレと、味がするんだかしないんだか、でもないと絶対にものたりないブラウンソースです。日本人はあんまり好きじゃないみたいですが、大陸のDNAなのか、酸っぱい食べ物やこっくりした味わいの食べ物があちらではよく食べられます。私は大好きです。
 さて、いろいろと蛇足がにょきにょきと伸びました。
 しっかりと精緻に整えた物語の中に、こんなふうに私情にまみれたものなんて挟みたくないのが、お判りいただけたと思います。作者近況なんてもってのほかです。誰も私本人には興味がないはずですからね。

追記 
ダウランドの作品はWhite az lilies waz her faceで
Have you seen the bright lily grow? はジョンソンでした。
おはずかしい。
謹んで訂正いたします。

2018年6月27日水曜日

ゆっくりじっくり執筆スケジュール

こんにちは。ご機嫌いかがですか。
2018年春の新刊『〈黒獅子物語1〉怒れる獅子の旅立ち』を脱稿・刊行し、
COMITIA、文フリ東京、関西コミティア、北海道COMITIAと
続けて頒布してまいりました。
ここあファンのみなさま全員にお届けできたでしょうか。
会えなかった方も多く、不安が残るところであります。

さて、これまでなら脱稿後、エネルギーを使い果たして
満身創痍でイベントに突入、そのままシーズンオフへ。
というのがよくないスケジュールだったのですが、
なんと、脱稿後からすぐ、二巻に着手している私がいました。
ほめ……
いや、みんなきっときちんと一区切りつけたら
すぐに新しいことに取り組んでいるはずなので、
褒めてもらえはしませんでしょう。
なので自分でします。えらいぞ、その調子っ。
ちゃっかり表紙のアイディアも固まってて、よいよいですよっ。

新刊は「きっと誰も待ってない」「誰も読んでくれない」
「落としたって誰も気にしない」「落としたら私は私を嫌いになる」
などと、泣きながら書くのが通例なのですが、
それじゃあちっとも成長していないことになります。
なので、スケジュールを組みました。
待ちわび、求め、読んで、好きでいてくださる方に
失礼なことを言っているのは承知なのですが、
極限状態ですり減ったとき、絶望と〆切とデッドリーダンスしているのでご容赦いただけたら……。

と、いうことでですね。
執筆スケジュールはCOMITIAの開催日にあわせ、
刊行スケジュールは春・秋のCOMITIAにあわせることにしました。
どう計算しても、やっぱり三年かかるんです。
三年あったら、賞に投稿し続けている人がいいところにいっちゃうかもしれない。
その間、私は対外的な営業もせず、黒獅子にかかりっきりになります。
果たして私は、成長できるのでしょうか。
ひとつのケリをつけるにしては、とても長い時間を使うことになります。
このけじめがついたとき、私は果たして何者になれているのでしょうか。
漠然とした不安はありますが、実は落ち着いた気持ちで執筆できています。
とにかく、私は彼らを明るい未来へ連れて行かねばならないのです。

しかし、書けば書くほど、自分のアラが見えてきます。
印刷し終わった本をうっとりながめる暇もありません。
一文一文、もしくは拾いきれなかった誤字脱字にハンカチを噛みながら、
「もっとやれた」「ここはこうすべきだった」と反省するばかり。
本番と同じですね。
試行回数を増やすことにより、成功率を上げていくほかありません。
二巻は11月の予定です。がんばるぞ~!
感想はいつでもお待ちしております。

2018年4月20日金曜日

新刊のあとがきにかえて

こんにちは。ここあです。
泣きながら発行したイラスト集から四か月。
またもべそをかきながら新刊をかき下ろしました。
新刊は『〈黒獅子物語1〉怒れる獅子の旅立ち(以下黒獅子』です。
文庫サイズ、436ページかきおろし、カバー・しおり付き。
イベント頒布価格1800円。
5月5日COMITIA124【け06b】
5月6日文学フリマ東京【イ-58】
5月20日関西コミティア52【N-60】
(※【】内はスペース番号です)
以上のイベントで手売りを予定しております。よろしくお願いします。

今回、黒獅子1には私、黒井ここあという人間についてを紙面にのせたくなくて、
今回はあとがきを書かず、載せませんでした。本の中には物語だけで、清々しいです。
ですが、入稿を終えてみると、少し感慨に耽りたい気持ちもむくむくしてきました。
書きたい人が書く、読みたい人が読む。
そういう気楽なツールとして、ブログを「要らない紙」みたいな
気楽な筆記用具として使うことにしました。
小説のあとがきがお好きな方は、どうぞ最後までお付き合いください。

2013年から書き溜め、2014年からネットに放出、
それからいじったりいじらなかったりを繰り返してきた小説です。
小説とは言えないなあ、と今は思います。シナリオでした。
元々は、オリジナルRPGを製作して遊ぶつもりで書いていたので、
展開がさっくり、やりとりもさっくり。
普通にどこにでもあるラノベでした。
幻想文学とか言える立場じゃなかった。赤っ恥。

RPGにしたかった手前、音楽も作りたいし、
音楽のリリースと合わせて新展開を見せたいし。
などと砂時計のようにくるくる、本末転倒を繰り返し、
なあなあのままにしてきました。

逃げるように、新しいお話を書いていたようです。
いつかもどってこられる看板作品がある、というのは
なんだかんだ言い合っても結局は愛してくれる親がいる
というのに似た感覚だったのかもしれません。

新しく作品を執筆し、取りまとめていく間にも、
いつも黒獅子のことを思いました。
枕頭に置いたのは、何物でもなく資料研究ノートです。
何度も何度も、同じシーンについて考えていました。
この堂々巡りは、終わらない悪夢でした。

メビウスから抜け出せることに気づいたのは、
『純白の抒情詩(上下・2016、以下リューリカ)』を刊行してからでした。
リューリカこそ、クライマックスを書きたくて、
または書きたくなくて、ずうっと手元で温めていたものです。
このクライマックスとは、主人公アルフレッドが、囚われのヒロイン・リュリを
助けに王城へ単身乗り込むというシーンです。
第四章で最も、主人公の心が裸になる大切なシーン。
わたしは、この直前で筆をおいてました。
このままでは、永遠にアルフレッドはリュリと出会えないのです。
しかし、著者の頭の中では、何通りも、何十通りも、
何百回と彼らは感動の再会を果たしています。
妄想するだけで、文字には起こしていませんでした。
今思えば、当時の私は、物語のエンディングを確定したくなかったのです。
『探偵王子とフォルトゥーネ(2017、以下フォルトゥーネ)』の第一章で
主人公の探偵パーシィが、事件の真相に迫る言葉があります。
「乙女が永遠に恋し続ける物語に、ピリオドを打ちたいだろうか」
これは、未来の私が過去の私を戒めるような、確信を突いたセリフとなりました。

想像力の豊かな人は、「もしも」遊びが大好きです。
それはとても素晴らしいことで、対人に使うことができれば
「おもいやり」そのものになります。
ですが、物書きとしては、酷い行為になるでしょう。
読者に対してだけではありません。登場人物に対してです。
彼らの人生をまっとうさせてあげること、一番色濃い思い出を
取り出して鮮やかに描き切ること、それが物書きとしての責任ではないでしょうか。

リューリカを書き終えて、刊行して。
私の枕元に、アルフレッドも、リュリも、
ジークフリートも、ロゼも立たなくなりました。
彼らは、彼らの一番の思い出を胸に、物語のかなた――未来へと歩き去りました。
その代わりに、ヒロインの一人・少女騎士ミラーが、私の枕元に来るようになりました。
彼女は、私が筆をおいたところから少し進んだ部分、クライマックスの場面を
怒りもせず、泣きもせず、ただただ何テイクも何テイクもやらされるのです。
悪夢は、違う悪夢になりました。
それは主人公グレイも同じでした。
彼は、彼が一番傷つくシーンを、何べんも何べんも演じます。
何度撮影しても、何度よい演技をしても、脚本がころころかわるために
ずっと終わらないクランクのようです。
そんなことを、ずっと脳内で続けるのは不毛でした。

自分のけじめとして、小説版を刊行しようと決めました。
デザインも一新、シナリオに深くかかわらない身体的特徴を変更しました。
黒獅子を一番脂ののった形で刊行したいという夢から、
小説を書く、すなわち、ピリオドを打つ訓練も、リューリカとフォルトゥーネ、
そして『魔女の煌めき屋(2017)』で少しは積んできました。
たったみっつのピリオドですが、ないのとあるのとは、全然違います。
歴史のこともPeriodといいます。
私の作家としての歴史が、本棚にある。並んでいる。
しかも自分の本棚だけでなく、ファンの方の本棚にも刺さっている。
こんなに嬉しい自己実現があるでしょうか。

黒獅子物語は、私にとってかけがえのない存在です。
物語を紡ぐ喜びを思い出させてくれたもの。
物語を分かち合う喜びをくれたもの。
常闇と常昼の国で私を慰めてくれたもの。
私と誰かを繋いでくれたもの。
そして、私のこれからを占うもの。
小説版を最初から最後まで書けるのは、私しかいない。

『〈黒獅子物語1〉怒れる獅子の旅立ち』
とても大切な、看板作品を、この春リリースします。
全7巻予定。
グレイの冒険と戦いを、どうか見守ってください。

2018年1月28日日曜日

減塩

ちょっと、いえ、どうしてもお伝えしたい点があります。
ツイッターを整理いたしました。
面識のある方を中心に、ウェブ上のみでもかかわりがある方をフォローしている状況です。

そしてお気づきのことと思いますが、黒井ここあのツイッター、激しく塩対応になっています。
ヒマラヤピンクソルトのまろやかな味わいと封邪をかついでいるわけではありません。
水で清めたパワーストーンをのせてパワーを清めるお塩って食べていいの?
などという小さな疑問はさておき。

作品の制作をメインにすることで、みなさまに誠実であろうと思いました。
新刊を出すことが、私の誠意です。
特に、黒獅子物語については――とてもありがたいことに――何人もの方をお待たせしています。
「待っているよ」「楽しみにしています」の言葉に胡坐をかいてはいけない。
完成作品を提示できることが、私にとってとても大事なことだと、気持ちを改めました。
ウェブ版と文庫版は、違うものになります。
ウェブでのルートと、文庫のルートが途中で交わる可能性は高いです。
より洗練させていけたらと、試行錯誤しているところです。

隅から隅まで実力の150%を出し切って完成させたい、
簡単に言えば、痛々しい完璧主義者なのです。
ですから、交流を控えさせていただいています。
一方的な宣伝ばかりになっていますが、それでもよくしてくださる方が多く、
本当にいつも励まされております。ありがとうございます。

正直、とても寂しいです。
寂しくて、いじけてしまう日もあります。
本物のお友達同士のように軽いやり取りをする楽しさは、私もよく知っていますから。

ツイッターは本義ではSNSとは言えないもので、
解釈としてはウェブスクラップブックであると思います。
そして発信にも受信にも十人十色の自由がございます。
あなたとわたしの、使い方が違うのですね。
そう、ご理解いただけますと嬉しいです。

心苦しいですが、ぐっと、ぐっと。
応援してくださる方が一人でもいらっしゃるかぎり、私は頑張ります。

2018年の12分の1が終わるねって言われると焦る

あけましておめでとうございます。
昨年は大変お世話になりました。
今年も、黒井ここあとちょこれいつを
どうぞよろしくお願いいたします。

よし。
挨拶ができるかできないかは、大事ですからね。
では次に懺悔をしたいと思います。

秋の巡業でのあれやこれや、新刊のこととか
コミケ初申込にして初当選で初お誕生日席だとか
イラスト集を胃液まき散らかしながら描いたとか
30目前で夢かなったコミケへの熱い思いと寒い思いとか
文学フリマ京都でのうきうきるんるんルポだとか
メイドスキー戦隊の新しいプロジェクトとか
黒獅子物語のあれやこれやとか

そういうの全部、ご報告も感謝も申し上げずにすみませんでした。
ツイッターで済ますのはもう、やめにしようと思います。(BGM神田川)
鹿島神宮にいったよルポとかも本当は書きたかったんです。
今年は楽しい思い出を書き残していけたらいいなあと思います。
抱負というやつです。
そういえば、「やつ」っていうのはお下品なんですってね。
いかにいわば好ましけれ。
抱負というものです。
「というもの」の音を聞くと、やはり思い出すのはあのフレーズ。
「男のすなる日記といふものをすなり」
これよ。
紀貫之のたおやかなネカマっぷりは、時を超えても美しいですね。
生来のがさつさが透けて見えないよう、きちんとしたいものです。